人間ドックの結果を「経過観察」で終わらせず、ロンジェビティ視点で読み解くシリーズです。

サプリメント実践者・筋トレ実践者の数値は、一般集団の基準値とずれることがあります。クレアチン服用者の血清クレアチニン上振れ、筋肉量増加によるeGFR過小評価、内臓脂肪と心電図低電位差、SAS(睡眠時無呼吸症候群)と脳白質病変の連動 ― いずれも単独では「経過観察」と判定されますが、組み合わせて見ると介入の優先度が見えてきます。

各記事は次の3層構成で整理しています。

  1. 実値レポート ― 個人情報を伏せた人間ドック実スキャンと数値開示
  2. 論文レイヤー ― RCT・メタアナリシス・ガイドラインで何が言われているか
  3. 介入の設計 ― 主治医への依頼文・追加検査・サプリ調整・年次再評価

医療従事者ではない一般人の運用記録なので、診断や治療指示ではありません。詳しくは免責事項 をご覧ください。

26kg減量とCPAPで血圧145→110まで来た42歳が、最後にABPMを受ける理由 ― 夜間血圧で「火種が消えたか」を確認する

2年前は110kg、現在は84kgです。朝薬前の血圧は145前後から110前後まで下がってきました。CPAP(持続陽圧呼吸療法)と降圧治療は継続中です。 ここまで減量・CPAP・降圧薬の組み合わせで日中の血圧は十分なところまで来ましたが、寝ている間の血圧は家庭血圧計や診察室では原理的に測れません。24時間ABPM(自由行動下血圧測定)だけが夜間平均、dippingパターン、起床直後の血圧スパイク(morning surge)を見せてくれます。 42歳の頭部MRIでDSWMH(深部皮質下白質病変)grade 1が指摘されています。これは110kg時代+SAS(睡眠時無呼吸症候群)未治療時代に作られた過去の蓄積で、戻りません。残された問いは「いまの治療で夜間血圧も同じく落ちているか、それともまだくすぶっているか」だけで、これを判定する1検査としてABPMを5月に受けます。本記事は結果が出る前のフェーズで論点を整理し、続報で実値を上書きする前提です。 エビデンスグレード: ★★★★☆(夜間血圧の予測力は確立。chronotherapyは試験ごとに結果が分かれている) ✓ 積み上がっているもの 夜間血圧は診察室血圧より心血管イベント・全死亡を強く予測する(IDACOコホート、Hansen et al. 2011 など複数のメタ解析) non-dipper・riserは白質病変進行・脳卒中の独立リスク因子(Verdecchia 1994 以降、複数研究で再現) 早朝高血圧(morning surge)は脳卒中発症の時間帯ピークと一致(Kario 2003) SPRINT試験で集中降圧群(収縮期<120)は標準群(<140)と比較して心血管イベント -25%(Wright 2015) SPRINT-MIND試験で同集中降圧群はMCI(軽度認知障害)発症 -19%(Williamson 2019) ABPMの保険適用条件は「治療抵抗性高血圧の診断」「白衣高血圧の診断」など複数あり、僕の状況は該当する見込み △ これから必要なもの 僕自身のABPM実値(5月以降に取得予定)。日中145→110まで下がった3点セットが、夜間にも届いているかの最終確認 chronotherapy(夜服用)の効果: MAPEC(Hermida 2010)が -61%、Hygia(Hermida 2020)が -45% を報告した一方、英国のTIME試験(Mackenzie 2022)では夜服用と朝服用で差がつかず Hygia試験はデータの整合性について複数の専門誌レター・editorialで懸念が指摘されており、扱いには注意が必要 CPAPコンプライアンスが時期で揺れる場合の dipping パターン変化(半年〜1年単位の追跡) 結論 ― ABPMは「治療の答え合わせ」として受けます 僕がABPMを受ける目的は、悪い兆候を探すことではなく、減量・CPAP・降圧薬という3つの介入の効果が、寝ている間にも届いているかを最終確認すること です。これを本記事では「3点セット」と呼びます。 日中の血圧は、家庭血圧計で朝晩測れば確認できます。実際、朝薬前で145前後から110前後まで来ました。SPRINT試験(Wright 2015)の集中降圧群目標である<120を10下回る数字で、ロンジェビティ視点でも文句のない領域です。一方で、寝ている間の血圧は本人が測れないため、24時間ABPMでしか確認できません。日中の血圧が落ちていても、夜間がnon-dipperやriserのままだと、白質病変を進める原因が残っている 可能性があります。 24時間ABPMは携帯型自動血圧計を1日装着して、日中15-30分・夜間30分間隔で60-100ポイントの血圧を記録する検査です。これで夜間平均血圧、dippingパターン、起床直後の血圧スパイク(morning surge)、血圧変動係数が分かります。日本では循環器内科で保険適用、3割負担で2,500-3,500円程度です。 ABPMが終わった後の論点として、non-dipperやriserが見つかった時に「降圧薬を夜に飲む」というchronotherapy(時間治療)が本当に有効かがあります。スペインのMAPEC試験(Hermida 2010)では夜服用群で心血管イベント -61%、続くHygia試験(Hermida 2020)でも -45%という強烈な結果が出ました。一方、英国のTIME試験(Mackenzie 2022、5万人超)では朝服用と夜服用で差がつかず、Hygia試験のデータ整合性については複数の専門誌レター・editorial で重大な懸念 が出されています。試験ごとに結論が分かれているので、自分は慎重にいきます。 5月の検査ではまずdippingパターンを把握することが目的で、結果次第で主治医と協議します。Hygiaの結果1本に乗るのは怖い、TIME試験を含めた複数試験を踏まえて決めたい気がします。 ABPM(24時間自由行動下血圧測定)で何が測れるのか ABPM(Ambulatory Blood Pressure Monitoring、自由行動下血圧測定)は、上腕に装着した携帯型自動血圧計で24時間連続的に血圧を記録する検査です。 測定タイミング 間隔 日中(覚醒時) 15-30分毎 夜間(睡眠時) 30分毎 合計データ点 60-100ポイント 24時間の連続データから、次の指標が計算されます。 ...

May 1, 2026 · 4 min · Mitsuhito

クレアチンでクレアチニンが上がる理由とeGFR偽性低下の切り分け方(実値)

人間ドックの結果でeGFR 58.1(基準60以上を下回る「L」判定)、血清クレアチニン1.13(H判定)― 一瞬「CKD(慢性腎臓病)か」と冷えました。 42歳、筋トレ歴20年、クレアチン3g/日を約2年継続。クレアチン服用者ではこの偽陽性が起きやすいと、レビュー論文で指摘されています。シスタチンCというマーカーは筋肉量とサプリの両方の影響を受けないので、これを追加で測れば「真の腎機能」が見えてきます。 本記事では、自費でシスタチンCを測る具体的な方法、結果解釈、メトホルミン将来導入の保険として腎機能をどう設計するかを、僕の実値とRCTを並べて整理します。シスタチンC値はまだ未測定で、次回の続報を出す前提です。 エビデンスグレード: ★★★★☆(クレアチンによるCre上振れの再現性は確立。ただし衛藤本人のシスタチンC値はこれから測定) ✓ 積み上がっているもの 機構: クレアチン → クレアチニンへの非酵素的環化は古典的生化学 上振れ幅: クレアチン長期補充で血清Cre が小幅上昇する可能性をレビューが指摘(Pline & Smith 2005)。短期ローディングでは変化なしの報告もある(Mihic 2000) 2型糖尿病患者でも実測腎機能(51Cr-EDTA法)に悪化なしの12週RCT(Gualano 2011) ISSN(国際スポーツ栄養学会)公式ポジションペーパー: 健常成人で安全性に懸念なし(Kreider 2017) シスタチンC: 筋量・食事の影響を受けないGFRマーカーとして欧米ガイドラインが推奨 UACR(尿アルブミン/クレアチニン比): 試験紙では拾えない初期蛋白漏出を検出 △ これから必要なもの 衛藤本人のシスタチンC値(次回受診で測定予定) クレアチン7日休薬時のクレアチニン再測定(Cre上振れ幅の個別定量、オプション) 6ヶ月後・12ヶ月後のフォロー値とトレンド 内臓脂肪減少後のeGFR変化(連動の有無) 結論 ― シスタチンCを足すまで「CKD」と決めつけない 総合判定Cの紙が届いたとき、最初に目に入った「eGFR 58.1(L)」「クレアチニン1.13(H)」で胸が冷えました 。CKD(慢性腎臓病)はステージ3aから心血管リスク・全死亡リスクが上がるとガイドラインに明記されているので、「これが本物なら戦略を全部組み直さないといけない」と頭を整理しはじめました。 ただ、僕はクレアチン3g/日を2年継続している筋トレ実践者で、しかも高タンパク食 です。これら3つは血清クレアチニンを上振れさせる典型条件として知られていて、レビュー論文では長期補充でCre値が小幅上昇しうると指摘されています。仮に上振れ幅が0.2だとすると、真値は0.93で、計算上のeGFRは70台後半に戻ります。 切り分けるための現実解は1つで、シスタチンCというマーカーを追加で測ることです。シスタチンCは筋肉量・食事・クレアチンサプリの影響を受けません 。同時にUACR(尿アルブミン/クレアチニン比)も測れば、糸球体障害が始まっているかどうかも分かります。この2項目を足して結果が両方正常なら「クレアチン由来アーチファクト(偽性低下)」、片方でも異常なら「真のCKD G3a疑い」として腎臓内科に進む、という分岐が立ちます。 僕は2026年5月の早い時期に、かかりつけ内科でシスタチンC + UACRを追加測定する予定です。本記事は結果が出る前の、判定設計と論文整理のフェーズ で書いています。続報で実値を上書きします。 人間ドックの実値(個人情報をマスクした結果ページ) 2026年4月の人間ドック実値で、腎機能関連は以下のとおりです。 項目 基準値 実値 判定 クレアチニン 0.00-1.04 mg/dL 1.13 H eGFR 60以上 58.1 L 尿酸 3.8-7.0 mg/dL 6.4 A(上限間際) 尿素窒素 8.0-20.0 mg/dL 範囲内 A 尿蛋白(試験紙) (-) (-) A 尿潜血 (-) (-) A 総合判定はC、メタボリック判定は予備群該当。BMI 26.2、腹囲90.6cmで体格面の所見もありますが、腎機能関連に絞ると「eGFRが基準を下回り、クレアチニンが基準を上回る」 という、形式的にはCKD G3a疑いに見える数字です。 ...

April 30, 2026 · 更新: May 10, 2026 · 3 min · Mitsuhito