VO2max(ブイオーツーマックス、最大酸素摂取量: 心肺が酸素を取り込んで筋肉に届ける能力の指標)は、米国心臓協会(AHA)が2016年の科学的声明で、臨床で測るべき数字として取り上げたものです。声明では、VO2maxは喫煙や高血圧などより強い死亡の予測因子かもしれない、とされています。予測因子とは、将来の死亡リスクを見積もる目安のことです。サプリメントに月数万円かける前に、これをいちばん効率よく伸ばせる方法があります。それがNorwegian 4x4(ノルウェー式4分×4本)です。HIIT(ハイインテンシティ・インターバル・トレーニング: 高強度の運動と回復を繰り返す方式)の一種で、きつい4分を4本こなす覚悟 が要るメニューです。ただ、70代の高齢者が5年間安全に続けられたデータもあります。僕は42歳で、週2回エアロバイクで回しています。脚が重くなる感覚とは、いまも付き合い中です。

エビデンスグレード: ★★★★★(確立済み)

✓ 積み上がっているもの

  • 仕組み: 4分あれば心拍数がVO2max付近まで上がり、その高さでしばらく過ごせる
  • メタアナリシス2本: HIITは中強度持続運動(MCT)よりVO2maxを伸ばす。心血管代謝疾患の患者ではMCTの約2倍(Weston 2014)、健常成人では差が+1.2 mL/kg/min(Milanović 2015)
  • 大規模RCT: Generation 100試験(n=1,567、70-77歳、5年間)で、運動中の死亡はゼロ
  • AHAの科学的声明(2016年): VO2maxを、血圧や脈拍と同じように臨床のバイタルサインとして測ることを提案
  • 観察研究: VO2maxが1MET上がるごとに全死亡リスクが約13%低下(33研究・約10万人のメタアナリシス)

△ これから必要なもの / 注意点

  • 心疾患や高血圧の既往がある人は、医師の許可を取ってから始める
  • 手首式の心拍計は、心拍が高いところで精度が落ちることがある(胸バンドがおすすめ)
  • Generation 100では対照群の一部も自分でHIITをしていて、群の差が薄まった可能性がある(本文で詳しく)

結論

VO2maxを伸ばす方法の中で、僕がいちばん費用対効果が高いと感じているのがNorwegian 4x4です。4分の高強度と3分の回復を4セット繰り返すメニューで、1回あたり約38-40分かかります。これを週2-3回行います。

VO2maxは、2016年に米国心臓協会(AHA)が科学的声明で、喫煙や高血圧、糖尿病よりも強い死亡リスクの目安になりうる とした数字です。心血管代謝疾患の患者では、HIITなら中強度の運動の約2倍伸ばせた、というメタアナリシスがあります。70代を5年間追ったGeneration 100試験では運動中の死亡事故がなく、VO2maxも一番よく保たれていました。心不全の患者を対象にしたRCTでも、安全に行えたと報告されています。

きつい4分を4本こなす精神的な負荷 は、正直かなり大きいです。ただ、週80分の運動でVO2maxを1MET上げられるかもしれないなら、費用対効果の桁が違うと思っています。

VO2maxは、なぜ死亡リスクとここまで結びつくのか

VO2maxは、運動の得意・不得意を測るだけの数字ではありません。心臓が血液を送り出す力と、血管が広がる力、筋肉が酸素を使う力をひとまとめにした、**体力の貯金(余力)**のような数字です。

僕はもともと、筋トレの重量と体組成計の数字ばかり追っていました。有酸素運動は「ついでにカロリーを使うもの」くらいの扱いです。VO2maxのほうが、喫煙や高血圧、糖尿病より死亡リスクと強く結びついている。そのデータを見て、自分の優先順位が逆だったと気付きました。

VO2maxが高い人ほど、死亡リスクは低い

研究 対象 結果 出典
Mandsager et al. 2018 122,007名、中央値8.4年追跡 最高フィットネス群は最低群と比較して全死亡リスク約80%低下。上限なし(フィットネスが高いほどリスクが低い) PMID: 30646252
Kodama et al. 2009(メタアナリシス) 33研究、102,980名 VO2maxが1MET(3.5 mL/kg/min)上がるごとに全死亡リスク13%低下、心血管イベント15%低下 PMID: 19454641
Nauman et al. 2017(HUNT研究) 約39,000名 VO2maxが1MET上がるごとに心血管死亡リスク15-18%低下(従来のリスク因子とは独立) PMID: 27866655

3本の中で僕が一番驚いたのは、Mandsagerの研究にある「上限なし」 という結果でした。体力が高ければ高いほど、死亡リスクは下がり続けていたんです。運動に「やりすぎ」の線が見つからなかったというデータは、ほかではあまり見かけません。

AHAの公式見解(2016年)

米国心臓協会は2016年、心肺の体力(VO2max)を臨床バイタルサインとして測ることを提案する科学的声明を出しました。出典はRoss et al. 2016(PMID: 27881567 )です。

比べた相手は、喫煙・高血圧・高コレステロール・2型糖尿病です。VO2maxはそのどれよりも強い死亡リスクの目安かもしれない 、というのが声明の中身でした。血圧やコレステロールは、毎年の人間ドックで測ってもらえます。でもVO2maxは測ってもらえません。このアンバランスが、僕はずっと気になっています。

Norwegian 4x4は「4分×4本」のHIIT

このメニューを作ったのは、ノルウェー科学技術大学(NTNU)のUlrik Wisløff教授のグループです。CERG(Cardiac Exercise Research Group: 心臓運動研究グループ)という研究室です。

1回40分の中身

フェーズ 時間 強度 心拍数 体感(RPE)
ウォームアップ 10分 楽 最大心拍数の60-70% 会話が楽にできる
インターバル1 4分 きつい 最大心拍数の85-95% 2-3語しか話せない
回復1 3分 楽 最大心拍数の60-70% 歩きまたは軽いジョグ
インターバル2 4分 きつい 最大心拍数の85-95%
回復2 3分 楽 最大心拍数の60-70%
インターバル3 4分 きつい 最大心拍数の85-95%
回復3 3分 楽 最大心拍数の60-70%
インターバル4 4分 きつい 最大心拍数の85-95% 最もきついインターバル
クールダウン 3-5分 楽 最大心拍数の60-70%

ウォームアップからクールダウンまでで、1セッションです。

強度の数字について: いまのCERGの公式推奨は「最大心拍数の85-95%」です。Wisløff研究室の原著RCT(Helgerud 2007、Wisløff 2007)は「90-95%」でした。この記事の実践パートは、原著に近い90-95%を目安にしています。

なぜ4分で、4本なのか

4分という長さは、心拍数をVO2max付近まで上げて、そこにしばらく留まれるように逆算されています。

走り始めてから心拍がターゲットに届くまでには、約2分かかります。VO2max付近で過ごせるのは各インターバルの後半2分なので、4本合わせると約8分になる計算です。

2分以下では、心拍が上がりきる前に終わってしまいます。6-8分まで延ばすと、今度は強度を保てません。中強度の運動に近づいてしまうんです。4分×4本は、きつさと効率のバランスがちょうど取れる長さ で、複数のRCTがこの組み方を支持しています。

HIITとMCT、VO2maxの伸びはどれくらい違うか

MCTは「Moderate Continuous Training(中強度持続運動)」の頭文字です。ジョギングやウォーキングのように、一定のペースで続ける運動を指します。

RCTとメタアナリシスの比較

研究 対象 結果 出典
Helgerud et al. 2007 健常若年男性40名、8週間 4x4群: VO2max +7.2%。中強度群: 有意な改善なし PMID: 17414804
Weston et al. 2014(メタアナリシス) 心血管代謝疾患患者、10研究 HIIT: VO2max +19.4%。MCT: +10.3%。HIITが約2倍 PMID: 24144531
Milanović et al. 2015(メタアナリシス) 健常成人、28研究 HIITとMCTの差分 +1.2 mL/kg/min(±0.9)。HIITが優位 PMID: 26243014

3本とも、HIITのほうがMCTより効率よくVO2maxを伸ばす という結果でした。差の大きさは対象によって違います。心血管代謝疾患の患者を集めたWestonのメタアナリシスでは、HIITの伸びがMCTの約2倍でした。健常成人を集めたMilanovićのメタアナリシスでは、差は1.2 mL/kg/minです。同じ時間を使うなら、HIITのほうが伸びは大きい。条件を変えても、そこは揃っていました。

Generation 100試験(5年間のRCT)

Norwegian 4x4の裏づけで一番大きいのが、この試験です(Stensvold et al. 2020, BMJ )。舞台はノルウェーのトロンハイムで、70-77歳の1,567名を3つの群に分けて5年間追いかけました。

HIIT群は4x4を週2回、MCT群は50分の中強度運動を週2回行います。対照群は、国の運動ガイドラインに従うだけです。

5年間の全死亡率は、HIIT群が3.0%、MCT群が5.9%、対照群が4.7%でした。VO2maxが一番よく保たれていたのもHIIT群で、QOL(生活の質)のスコアも一番高くなっています。運動中の死亡事故はゼロ でした。

注意点もあります。対照群の約18-23%(1年目23%、3年目22%、5年目18%)が、自分でHIITをしていました 。そのぶん、群の差が薄まった可能性があります。

70代が5年間、HIITを安全に続けられた。Norwegian 4x4の安全性を考えるうえで、これはかなり強い材料だと思います。「HIITは若い人の運動」という思い込みは、このデータの前では通りません。

心不全の患者でも安全に行えた

Wisløffら(2007)は、心不全の患者27名にNorwegian 4x4を行いました(PMID: 17548726 )。対象はNYHA class I-III(心不全の重さを4段階に分けたうちの1〜3段階目)です。VO2maxの伸びは46%で、MCTの14%を大きく上回っています。医師の監督下なら、心臓が弱っている人でも安全に行えたというデータです。

最大心拍数を出して、Norwegian 4x4を始める

最大心拍数の推定

NTNUが勧めている計算式はこれです。

最大心拍数 = 211 - (0.64 × 年齢)

年齢 推定最大心拍数 90-95%ゾーン
30歳 192 173-182
40歳 185 167-176
42歳 184 166-175
50歳 179 161-170
60歳 173 156-164
70歳 166 149-158

推定値には個人差があります 。心拍計の数字を見ながら、体感と合わせて調整してください。

運動の種類

大きな筋肉を使う有酸素運動なら、種目は何でも構いません。

いちばん一般的なのはトレッドミルです。傾斜をつければ低い速度でも心拍が上がるので、初心者や高齢の方にも向いています。エアロバイクは関節への負担が少なく、僕はこれを使っています。ローイングマシンなら全身運動になりますし、屋外で走るなら坂道を使うと強度を作りやすいです。

最初の数週間の慣らし方

いきなり4分×4本をやっても、危険というわけではありません。ただ、きつすぎて挫折しやすいんです。3-4週かけて段階的に強度を上げる のがおすすめです。

週 インターバル本数 強度
1-2週目 2本×4分 85-90% HRmax(やや抑えめ)
3-4週目 3本×4分 88-93% HRmax
5週目以降 4本×4分 90-95% HRmax(フルプロトコル)

よくある失敗パターン

  1. 1本目から全力で飛ばす。心拍がターゲットに届くまで約2分かかるので、最初から全開だと4分もちません。4本目が一番きつくなるペース で入るのが正解です
  2. 回復の3分で完全に止まる。止まると血液が心臓に戻りにくくなるので、歩くか軽いジョグを続けます
  3. 毎日やる。回復が追いつきません。週2-3回が上限 と考えて、間に筋トレや休息日をはさみます
  4. 心拍数を見ない。体感だけだと、強度が足りなかったり高すぎたりしがちです。心拍計はほぼ必須だと思ってください

僕の場合: 42歳、週2回のエアロバイク

Norwegian 4x4は週2回、エアロバイクで回しています。残りの日はダンベルスプリット(Big 4 A/B)と休息日です。

1回のセッション(最大心拍数の推定は184)

  • ウォームアップは10分で、心拍は120bpmくらい
  • インターバルは4分×4本です。目標の166-175bpmに対して、3本目あたりから170を超えてきます
  • 回復は3分ずつで、120-130bpmまで落とします
  • クールダウンは5分です

4本目の後半2分は、正直きつい です。太ももの前側に鉛を詰められたような重さが来て、口が渇いて唾がうまく飲み込めなくなります。見ているのは「あと30秒」のカウントダウンと、正面の窓に映る自分の肩の揺れだけ。翌朝は股関節の付け根が張っていて、階段を下りるときに一拍だけぎこちなくなります。

始めたばかりの頃は、3本目の途中で脚が回らなくなった日もありました。ペダルから足を抜いて、そのままシャワーに直行です。出張でサボった週も、忙しさを言い訳に週1回しかできなかった月も、普通にあります。

当時の心拍の記録を見返すと、ちょっと恥ずかしくなります。同じワット数なのに心拍が20近く高く、下がるのにも時間がかかっていました。いまは同じ負荷なら、心拍が落ち着いて戻るようになってきています。心臓が1回に送り出す血液の量が、少しは増えたのかなと思っています。

VO2maxをラボで直接測ったこと(呼気ガスを測る方式)は、まだありません。心拍計の推定値は上向きなので、ラボでの測定を次にお金をかける候補に入れています。

週2回、40分ずつの運動が健康長寿にどれくらい影響するのか、一度まじめに見積もってみる価値はある と僕は感じています。ITP(アイティーピー)は、米国NIAが3機関で同時にマウスの寿命を検証する、再現性の高い試験プログラムです。ITPのサプリ介入 と並べて考えても、「まず運動から」という順番は変えにくいと感じます。人間の観察研究で出ている効果の大きさを見ると、そう思います。始めるのに要るのは、心拍計と、きつい4分を4回耐える気持ちくらいです。

よくある質問

心臓に持病があってもHIITはできる?

Wisløffら(2007)は、心不全の患者でも安全に行えたと報告しています。ただ、始める前に必ず医師の許可を取ってください 。

週2回と週3回、どちらがいい?

研究の多くは週3回で行われています。Generation 100は週2回でした。週2回と週3回を直接比べて、最低限の回数を決めた研究は、僕は見つけられていません。続けやすい週2回から始めて、余裕があれば週3回にする、くらいでいいかなと思っています。

ランニングができない場合の代わりは?

エアロバイク、ローイングマシン、傾斜をつけたトレッドミルでのウォーキングなどが使えます。大きな筋肉を使う有酸素運動なら、何でも構いません。膝や腰に不安があるなら、エアロバイクが一番安全です。

Apple Watchの心拍数で足りる?

基準になるのは胸バンド式(Polar H10など)です。手首式は、心拍が高いところで精度が落ちることがあります 。僕もインターバルの後半に、Apple Watchだけ10bpmほど低く出て慌てたことがありました。心拍がちょうどターゲットに乗ったところでした。結局、Polar H10を胸に巻くようになっています。とはいえ、まず手元にあるもので始めるのは十分アリだと思います。

どれくらいで効果を実感できる?

Helgerud 2007では、8週間でVO2maxが7.2%伸びています。僕の体感だと、3-4週間ほどで「同じ強度なのに心拍が落ち着いている」と感じることが多いです。

参考文献

  1. Helgerud J, et al. (2007). Aerobic high-intensity intervals improve VO2max more than moderate training. Med Sci Sports Exerc. 39(4):665-671.
  2. Wisløff U, et al. (2007). Superior cardiovascular effect of aerobic interval training versus moderate continuous training in heart failure patients. Circulation. 115(24):3086-3094.
  3. Kodama S, et al. (2009). Cardiorespiratory fitness as a quantitative predictor of all-cause mortality. JAMA. 301(19):2024-2035.
  4. Weston KS, et al. (2014). High-intensity interval training in patients with lifestyle-induced cardiometabolic disease. Br J Sports Med. 48(16):1227-1234.
  5. Milanović Z, et al. (2015). Effectiveness of HIT and Continuous Endurance Training for VO2max Improvements. Sports Med. 45(10):1469-1481.
  6. Ross R, et al. (2016). Importance of Assessing Cardiorespiratory Fitness in Clinical Practice (AHA Scientific Statement). Circulation. 134(24):e653-e699.
  7. Nauman J, et al. (2017). Prediction of Cardiovascular Mortality by Estimated Cardiorespiratory Fitness Independent of Traditional Risk Factors: The HUNT Study. Mayo Clin Proc. 92(2):218-230.
  8. Mandsager K, et al. (2018). Association of Cardiorespiratory Fitness With Long-term Mortality. JAMA Netw Open. 1(6):e183605.
  9. Stensvold D, et al. (2020). Effect of exercise training for five years on all cause mortality in older adults — the Generation 100 study. BMJ. 371:m3485.

※運動プログラムと体感変化の因果関係は不明です。

※個人の感想であり、効果を保証するものではありません。心疾患・高血圧の既往がある場合は医師にご相談ください。

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