2023年6月、Science誌に「タウリンを与えたマウスは寿命が+10-12%延びた」という論文が載りました。タウリン(Taurine)は含硫アミノ酸の一種で、年をとると血中濃度が大きく下がります(マウスで約70%、人間で約80%)。減ったぶんを補えば老化がゆっくりになるのでは、というのがこの研究の発想です。
ただ、ITP(米国の3機関が同時にマウスの寿命を確かめる試験プログラム)では、まだ試されていません。安くて安全性の記録もそろっているので、僕は1g/日を飲みながら結果を待っています。
エビデンスグレード: ★★★☆☆(有望、独立再現待ち)
✓ 積み上がっているもの
- 加齢による低下: 血中タウリンは年とともに大きく下がります(マウスで約70%、サルで約85%、人間で約80%)。3種で同じ向きです
- 動物実験: マウスの寿命中央値が、オス・メスとも+10-12%延びました(Singh 2023 Science誌、単一施設)
- 線虫でも、寿命が+10-23%延びています(濃度によって変わります)
- 中年のアカゲザルで、骨密度・空腹時血糖・肝機能マーカーの改善が報告されています
- 人間の観察研究(約12,000名): タウリン濃度が低い人ほど、高BMI・高血圧・2型糖尿病が多い傾向でした
- 人間のRCT(ランダム化比較試験)では、血圧・炎症・運動パフォーマンスの改善が複数報告されています
- 安全性: EFSA(欧州食品安全機関)は、6g/日まで重い副作用はないと評価しています
- コスト: パウダーなら月額約300円です
△ これから必要なもの
- ITPでの独立した再現(Singh 2023は、C57BL/6という1系統のマウスを使った1施設の試験です)
- 老化そのものを見た人間のRCT(いまあるのは、血圧・炎症・運動のRCTだけです)
- 年をとってタウリンが減るのは、老化の「原因」なのか「結果」なのか、の切り分け
- Singh 2023のマウス用量を人間に換算した量(3-6g/日)を、長く飲んだときの安全性
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先に結論: 安くて安全なので1g/日、ITPの結果しだいで見直します
タウリンは、年をとると減る含硫アミノ酸を、前駆体ではなくタウリンそのもので補うサプリです。発想はとても単純です。サルでは健康指標の改善、線虫では寿命の延長と、種をまたいで同じ向きの結果が出ています。
気になるのは、Singh 2023が1施設・1系統のマウス試験にとどまっている ことです。ITPでの再現もまだありません。僕はこの論文を、「Science誌に載った1本の研究で、裏取りはこれから」くらいに受け止めています。
人間でも、血圧・炎症・運動パフォーマンスのRCTで結果が出ていて、安全面の問題も報告されていません。パウダーなら月300円ほどで飲めるので、試す側のリスクは小さいです。ITPで再現されれば、マウス・サル・人間の結果がそろいます。そこに期待して、1g/日を飲んでいます。
日本では「栄養ドリンクの成分」のタウリン
タウリンは含硫アミノ酸の一種で、心臓・脳・網膜・筋肉に多く含まれています。体の中では、システイン(Cysteine、硫黄を含むアミノ酸)からつくられます。この合成する力が、年とともに落ちていくんです。
日本でタウリンといえば、リポビタンDでおなじみの成分でしょう。日本では医薬品成分に分類されているので、海外のようにレッドブルなどの清涼飲料水へ自由に入れることはできません。日本で売られているレッドブルには、タウリンが入っていません。そのせいもあって、日本では「栄養ドリンクの成分」というイメージが強く、サプリとして単独で飲む人はあまり見かけません。
加齢に伴うタウリン濃度の低下: マウス・サル・人間で同じ向き
| 種 | 低下幅 | 出典 |
|---|---|---|
| マウス | 4週齢→56週齢で約70%低下(132→40 ng/mL) | Singh 2023 |
| アカゲザル | 若年→高齢で約85%低下 | Singh 2023 |
| 人間 | 生涯で約80%低下 | Singh 2023 |
マウス・サル・人間の3種で、そろって大きく下がっています 。タウリンを老化の目印として見るうえで、大切な手がかりです。
とはいえ、この減少が老化を引き起こしているのか、老化の結果にすぎないのかは、まだ分かっていません。Singhらは原因だと主張しています。言い切るには、もっと研究が必要です。
Singh 2023(Science誌): タウリンで寿命が延びたマウス
この論文がScience誌に載ったのは2023年6月です。ここから、タウリンと長寿の関係に研究者と実践者の両方が一気に関心を向けました。いくつもの種で確かめているのが、この論文の強みです。
マウス(C57BL/6J系統)
C57BL/6J(シーフィフティセブン・ブラック・シックス・ジェイ)は、実験用マウスの近交系です。遺伝的にほぼ均一な個体がそろっていて、個体差が小さいぶん結果のばらつきも抑えられます。ただし別の系統で同じ結果が出るかは、別に確かめる必要があります 。ITPがわざと遺伝的背景の違うマウスを使うのも、この再現性を見るためです。
- 14ヶ月齢から、タウリン1000 mg/kg/日を飲み水に添加
- 寿命中央値はオス・メスともに約+10-12%延長
- 改善が報告されたバイオマーカー: 骨密度、筋持久力、体組成、耐糖能、免疫機能、ミトコンドリア機能、DNA損傷マーカー
アカゲザル(Rhesus macaque、中年個体)
- 約15歳のアカゲザル(人間なら50歳前後で、中年から高齢寄り)に、6ヶ月間タウリンを補充
- 骨密度(腰椎・下肢)の改善、空腹時血糖の低下、肝機能マーカーの改善を報告
- 追跡期間が短いので、寿命のデータはありません
線虫(C. elegans)
- タウリンの補充で、寿命が約+10-23%延長(濃度が高いほど延びる、濃度依存的な結果)
人間(観察データ)
- ヨーロッパの成人、約12,000名を解析
- タウリン濃度が低い人は、高BMI・高血圧・高い炎症マーカー・2型糖尿病と関連していました
- これは相関で、因果関係までは分かりません
出典: Singh P, et al. (2023). Science. 380(6649):eabn9257.
人間のRCT: 血圧・炎症・運動では結果が出ている
タウリンと老化を直接見たRCTは、まだありません。そのかわり、ほかの目的で行われた人間のRCTがいくつかあります。
| 研究 | 対象 | 介入 | 結果 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| Sun 2016 | 前高血圧者120名 | 1.6g/日、12週間 | 収縮期血圧 約-7 mmHg、血管内皮機能改善 | PMID: 26781281 |
| Rosa 2014 | 肥満女性 | 3g/日、8週間 | 炎症マーカー低下、酸化ストレス低下 | PMID: 24065043 |
| Ahmadian 2017 | 心不全患者 | 1.5g/日、2週間 | 炎症マーカー・アテローム指標の改善 | PMID: 28580833 |
メタアナリシス(運動パフォーマンス)
Waldron 2018 は、10研究をまとめたメタアナリシスです。メタアナリシス(Meta-analysis)は、複数の研究を統合して解析する方法のことです。タウリンの補充(1-6g/日)で、持久運動のパフォーマンスが有意に改善したと報告されました(PMID: 29546641 )。
ITPで再現されるかは、まだ分からない
タウリンは、まだITPで検証されていません 。ITP(アイティーピー: 米国NIA〈国立老化研究所〉が3機関で同時にマウス寿命を検証する試験プログラムで、再現性が高い)は、遺伝的背景の違うマウスを3機関で同時に使います。Singh 2023は1系統・1施設の試験なので、この条件を満たしていません。
ITPはこれまで、17α-エストラジオールやラパマイシンなど、いくつもの候補を再現性の面から確かめてきました。再現できなかった候補も少なくありません。1施設で出た結果が、その後の独立した試験で消えた例は、過去に何度もありました。タウリンがどう評価されるかは、ITPを通ってみないと分かりません。
推奨用量と飲み方
研究で使用された用量
| 研究 | 用量 | 出典 |
|---|---|---|
| マウス寿命試験 | 1000 mg/kg/日 | Singh 2023 |
| 血圧RCT | 1.6g/日 | Sun 2016 |
| 炎症RCT | 3g/日 | Rosa 2014 |
| 運動メタアナリシス | 1-6g/日 | Waldron 2018 |
マウスの用量は1000 mg/kg/日でした。これを体表面積法(FDAの標準換算式)で人間に当てはめると、約3-6g/日です。これは計算で出した値で、人間で同じように働くかは確かめられていません。
安全上限
EFSAは、6g/日までなら重い副作用は報告されていないと評価 しています。Shao & Hathcock 2008 は、観察安全レベルを3g/日としています。観察安全レベル(OSL: Observed Safe Level)は、問題なく使われてきたと確認できる量のことです(PMID: 18325648 )。
食事からの摂取量と、タウリンの食品含有量
- 日本人(一般的な雑食): 推定300-600 mg/日(魚介類の多い食事のため)
- 欧米人(一般的な雑食): 40-200 mg/日
- ヴィーガン(Vegan、完全菜食): ほぼゼロ(植物にはタウリンがほとんど含まれない)
| 食品 | タウリン含有量(mg/100g) |
|---|---|
| ホタテ・ムール貝 | 200-800 |
| タコ・イカ | 300-800 |
| マグロ・サバ・イワシ | 100-350 |
| 鶏もも肉 | 80-170 |
| 牛肉 | 40-60 |
| 豚肉 | 50-60 |
| 卵 | 5-20 |
| 乳製品 | 2-8 |
| 植物性食品 | 0 |
魚介類が中心の日本の伝統的な食生活は、世界で見てもタウリンの摂取量が多いほうです。Yamori 2009 のWHO-CARDIAC(ダブリューエイチオー・カーディアック)研究があります。この研究でも、日本人の尿中タウリン排泄量は世界でトップクラスでした(PMID: 19239132 )。尿に出る量は、食事からとったタウリンの量の目安になります。
日本人の長寿とタウリン(あくまで相関)
Yamoriらは世界61集団の疫学研究で、尿中タウリン排泄量が多い集団ほど、心血管死亡率が低いと報告しています。
日本人がタウリンを多くとっていることが長寿の一因では、という見方もあります。ただ、これは生態学的研究(集団単位で見た相関) で、一人ひとりの因果関係を示すものではありません。魚介類の多い食事では、オメガ3やタンパク質も一緒にとれます。タウリンだけの影響を切り分けるのは難しいです。
副作用・注意点
- 3g/日以下: 重い副作用の報告はありません
- 6g/日以下: 臨床試験で重い副作用は出ていません
- 消化器症状: 高用量(6g超)では、吐き気や下痢が起きる可能性があります
- 薬との飲み合わせ: リチウムを飲んでいる人は、始める前に医師に相談してください 。タウリンの利尿作用で、リチウムの血中濃度が変わる可能性があります
- ヴィーガン: 体内でつくれる量が限られ、血中濃度が有意に低いと報告されています(Laidlaw 1988, PMID: 3354491 )。サプリで補う意味は大きいかもしれません
おすすめ製品
カプセルタイプ(僕が買っているもの、手軽さ重視)
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パウダータイプ(コスト最優先)
- NOW Foods Taurine Powder(227g)は、1gあたり約5円です。カプセルの3分の1ほどの単価になります。量る手間が気にならない人に向いています
食事ベース
イカ・タコ・貝類などの魚介類を週3-4回以上食べていれば、サプリなしでもかなりのタウリンがとれます。日本に住んでいるなら、お金をかけずにできるいちばんの方法です。
僕の飲み方: 42歳、1g/日をカプセルで
僕(42歳)は、タウリン1g/日をカプセル(1000mg×1粒)で飲んでいます。魚介類も週4-5回食べているので、食事と合わせると1日1.5-2gくらいです。
Singh 2023のマウス用量(1000mg/kg/日)を体表面積で換算して僕の体重に当てはめると、4-5g/日になります(体重比でそのまま当てはめると数十g/日です)。でも、そこまでは飲んでいません。この換算値も計算上の数字で、人間で同じように働くかは分かっていないからです。サプリの1g/日は、人間のRCTで使われた量(Sun 2016の1.6g/日、Rosa 2014の3g/日)より少なめです。EFSAの示す6g/日よりも、かなり下です。
体感は特にありません。血圧はもともと正常範囲なので、RCTで報告された約-7 mmHgの低下も、そもそも感じようがないんです。
サプリスタック全公開 でも触れましたが、タウリンをスタックに残している理由は単純です。安くて、リスクが低くて、Science誌にマウス寿命+10-12%の論文があるからです。ITPの結果を待つあいだの出費としては、月額約510円なら許せる範囲かなと思っています。
やめる条件も、先に決めてあります。ITPでタウリンが再現されなかったら、手元のカプセルを使い切った時点でやめるつもりです。「Science誌に載った」は試してみるきっかけにはなりました。ただ、裏取りがないまま量を増やすつもりはありません。
よくある質問
リポビタンDを毎日飲めばタウリン補充になりますか?
リポビタンDには、1本にタウリン1,000 mgが入っています。Singh 2023を人間に換算した用量(3-6g/日)に届かせるには、1日3-6本が必要で、現実的ではありません。糖分やカフェインも入っているので、サプリとして補うならパウダーのほうが合理的です。
ヴィーガンはタウリンが不足しますか?
タウリンは、動物性の食品にしか含まれていません。Laidlaw 1988によると、ヴィーガンの尿中タウリン排泄量は雑食の人の約29%(約71%低い)でした。血漿濃度も、雑食の人の約78%(約22%低い)と報告されています。体内でもつくられますが量は限られるので、ヴィーガンの人はサプリで補う価値が雑食の人より大きいかなと思っています。
日本人は食事から十分なタウリンを摂れていますか?
魚介類が中心の日本の伝統的な食事では、タウリンの摂取は推定300-600 mg/日です。欧米(40-200 mg/日)より多めです。それでも、Singh 2023のマウス用量を人間に換算した量には、サプリなしでは届きません。
Science誌に載ったなら、もう確定ではないのですか?
Science誌は一次論文が載る雑誌です。トップ誌に載っても、1本の研究結果であることは変わりません。ITPのような独立した再現の仕組みを通って、ようやく「本当に差が出る」と言えるようになります。タウリンは、まだそこまで来ていません。
参考文献
- Singh P, et al. (2023). Taurine deficiency as a driver of aging. Science. 380(6649):eabn9257.
- Sun Q, et al. (2016). Taurine Supplementation Lowers Blood Pressure and Improves Vascular Function in Prehypertension. Hypertension. 67(3):541-549.
- Rosa FT, et al. (2014). Oxidative stress and inflammation in obesity after taurine supplementation: a double-blind, placebo-controlled study. Eur J Nutr. 53(3):823-830.
- Ahmadian M, et al. (2017). Taurine supplementation has anti-atherogenic and anti-inflammatory effects before and after incremental exercise in heart failure. Ther Adv Cardiovasc Dis. 11(7):185-194.
- Waldron M, et al. (2018). The Effects of an Oral Taurine Dose and Supplementation Period on Endurance Exercise Performance. Sports Med. 48(5):1247-1253.
- Yamori Y, et al. (2009). Taurine as the nutritional factor for the longevity of the Japanese. Adv Exp Med Biol. 643:13-25.
- Shao A, Hathcock JN. (2008). Risk assessment for the amino acids taurine, L-glutamine and L-arginine. Regul Toxicol Pharmacol. 50(3):376-399.
- Laidlaw SA, et al. (1988). Plasma and urine taurine levels in vegans. Am J Clin Nutr. 47(4):660-663.
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