最終更新: 2026-05-13
グリシン+NAC(GlyNAC)は人間で効くのか。この問いを高齢者で確かめてきたのが、Baylor医科大学のSekharグループです。2本の臨床試験(2021年パイロット8名 / 2023年RCT治療群12名) では、酸化ストレス・ミトコンドリア・身体機能の指標がそろって動いたと報告されています。ただし独立再現はまだゼロ、最長24週間 という前提つきです。それを承知のうえで、僕はラベル推奨量の合計1.6g/日を毎日飲んでいます。研究用量の約1割 で、研究と同じ量ではありません。
エビデンスグレード: ★★★☆☆(有望だが予備的)
✓ 積み上がっているもの
- グルタチオン(GSH)の材料であるグリシンとNACを、そのまま補う仕組みです。生化学的に無理がありません
- ITP(アイティーピー: 米国NIAが3つの研究機関で同じ介入を同時に試すマウス寿命試験プログラム。再現性が高い)では、グリシン単独で両性マウスの寿命中央値が +4-6% 延びました(Miller 2019)
- Baylorの臨床試験2本(2021年パイロット+2023年RCT)で、酸化ストレス・ミトコンドリア・身体機能の結果が同じ方向を向いています
- 成分そのもののリスクとコストは低めです
△ これから必要なもの
- 別の研究グループによる再現
- もっと大人数で長い臨床試験(今はRCTの治療群12名 / 最長24週間)
- GlyNACの組み合わせでのITP試験(グリシン単独は両性で成功、NAC単独は公式論文が見当たらない)
僕が実際に飲んでいる組み合わせ(合計月¥1,080)
グリシンはSwanson Glycine Powder 227g(★4.7・900件レビュー / 月¥400)
を使っています。NACはCGN NAC + Mo・Se 120カプセル(★4.7・3,500件レビュー / 月¥680)
です。紹介コード GDW3410 は、この記事のリンクから入ると自動で付きます。実購入リストはiHerb厳選サプリリスト
にあります。
GlyNACの中身と、グルタチオンの材料を飲む理由
GlyNACは名前のとおり、グリシン(Glycine)とN-アセチルシステイン(NAC)の組み合わせです。どちらもアミノ酸か、その誘導体にあたります。体の中でグルタチオン(GSH)を作るときの材料です。
グルタチオンは、グルタミン酸・システイン・グリシンの3つのアミノ酸がつながったトリペプチドです。体内の抗酸化物質のなかでも主要なもののひとつで、年をとるとGSHの濃度が下がるという報告が観察研究でいくつも出ています。
それならグルタチオンをそのまま飲めばいい、と思いますよね。ところが口から入れたグルタチオンは、消化管で大部分が分解されてしまいます。
そこで材料のほうを入れて、体の中で作ってもらおうというのがGlyNACの発想です。システインの供給源がNAC、もう一方の材料がグリシンという分担になっています。僕がGlyNACをスタックに残しているのも、この経路が生化学的に辻褄が合っているからです。
人間の臨床試験2本では何が変わったのか
加齢に関するGlyNACの人間の臨床試験は、ほぼすべてBaylor医科大学のRajagopal Sekhar博士のグループから出ています。中心になるのは下の表の2本です。その前段として、2011年には高齢者8名にシステインとグリシンを2週間補い、GSHの合成と濃度が若年者と同じくらいまで戻ったという小規模な試験も出ています(Sekhar 2011 )。
| 研究 | デザイン | 対象 | 介入 | 主な結果 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| Kumar et al. 2021 | オープンラベル・パイロット(プラセボ群なし) | 高齢者8名+若年対照8名 | GlyNAC、24週間(+ 12週間ウォッシュアウト) | GSH合成回復、酸化ストレスマーカー低下、ミトコンドリア脂肪酸酸化の改善、IL-6・TNF-α低下、握力・歩行速度の改善が報告 | PMID: 33783984 |
| Kumar et al. 2023 | ランダム化プラセボ対照試験(RCT) | 高齢者24名(GlyNAC 12 + プラセボ 12)+若年対照12名 | GlyNAC vs プラセボ、16週間 | 2021年試験の結果をプラセボ対照で確認。GSH回復、酸化ストレス・炎症マーカー低下、身体機能(歩行速度・握力・6分間歩行)の改善が報告。認知機能はこの試験の測定項目に入っていません | PMID: 35975308 |
2021年の試験は、プラセボ群を置かないパイロットでした。2023年はRCT(ランダム化比較試験)で、偽薬を飲んだ群と比べて同じ方向の結果が出るかを確かめています。
報告された主な変化
GlyNAC群について、次のような変化が報告されています。比べた相手は、2021年は飲み始める前の値、2023年はプラセボ群です。
- GSHの濃度と合成速度が、若年対照と同じくらいまで回復
- 酸化ストレスの指標(TBARS、F2-イソプロスタン)の低下
- ミトコンドリアの脂肪酸酸化の改善
- 炎症マーカー(IL-6、TNF-α)の低下
- インスリン抵抗性の指標(HOMA-IR)の低下
- 握力、歩行速度、6分間歩行距離の改善
- 認知テストのスコアの改善(2021年のパイロットのみ)
- DNA損傷マーカー(8-OHdG)の低下
やめると元に戻るのか(ウォッシュアウト期間)
2021年のパイロットでは、24週間飲んだあとに12週間の休薬期間(ウォッシュアウト)を置き、その間も追いかけています。やめたあとは、良くなっていた数値が元の方向へ戻っていく傾向があったそうです。
飲むのをやめれば戻りやすい、と僕は読みました。一度飲めば効果が積み上がっていくタイプのサプリではなさそうです。
マウス寿命試験ITPでは、グリシン単独で寿命が延びた
GlyNACの組み合わせそのものは、NIA(米国国立老化研究所)のITPではまだ試されていません。成分ごとのデータならあります。
グリシン単独では、両性マウスの寿命中央値が約4-6%延びました 。2019年に報告された結果で、雄が p=0.002、雌が p<0.001 です(Miller 2019)。
NAC単独については、グリシンのような寿命延長は報告されていません 。公式の論文は今のところ見当たらず、学会報告レベルにとどまっています。
当たっているのはグリシンだけのように見えます。2つを組み合わせて上乗せが生まれるのかどうかは、僕にはまだ判断できません。
エビデンスの限界:どこまで信じていいか
飲んでいるのに全力では勧められない理由も書いておきます。
いちばん大きいのは、人間の試験がすべてSekhar博士のグループ(Baylor医科大学)から出ていることです。別のグループによる再現試験は、今のところゼロ です。
人数もまだ少なく、GlyNACを飲んだのは2023年のRCTで12名、2021年のパイロットで8名でした。合わせても20名で、大規模なRCTは存在しません。
期間はRCTが16週間、パイロットが24週間でした。6ヶ月〜1年以上続けたデータはありません。
測っている中身も、大半は血液検査などのバイオマーカーです。病気になる人や亡くなる人の割合がどう変わるかは、まだ誰も測れていません。
研究の用量と市販サプリの用量にかなり差があるのも悩ましいところです(次の節で書きます)。
現状は、判定できるほど証拠がそろっていない段階です。僕は「有望だけれど、まだ予備的」と受け取って、無理のない量で飲み続けています。
用量と飲み方:研究は合計16g/日
研究で使われた用量
| 成分 | 用量(体重あたり) | 70kgの場合の概算 |
|---|---|---|
| グリシン | 1.33 mmol/kg/日(約100 mg/kg/日) | 約7 g/日 |
| NAC | 0.81 mmol/kg/日(約132 mg/kg/日) | 約9 g/日 |
| 合計 | — | 約16 g/日 |
市販のGlyNACサプリとの用量差
市販の「GlyNAC」サプリは、1日あたりグリシン1-2g + NAC 600-1200mgくらいの配合がよくあるパターンです。研究用量と比べると、1/5〜1/10 しか入っていません。この量で研究と同じ結果になるかは分かりません。
飲み方
研究では、1日分を2回に分けて飲んでいます。食事との関係は、論文側に明確な指定がありません。
僕はラベルの推奨量どおり、NACを1カプセル(600mg)、グリシンを1スクープ(1g)飲んでいます。
副作用・注意点
Sekharらの試験では、重篤な有害事象は報告されていません。肝機能や腎機能を含む標準的な血液検査でも、有意な変化はなかったそうです。
とはいえ対象者はRCTの治療群12名、パイロット8名と少なく、期間も16〜24週間と短めです。まれな副作用を見つけられるほどの人数ではありません。
成分ごとの注意もあります。NACは量が多いと、吐き気や下痢などの消化器症状が出ることがあり、ニトログリセリンなど一部の薬とも相互作用します。グリシンは体に合わない人が少ない成分ですが、高用量で長く飲んだときの安全性データは薄いです。
持病や服薬がある方は、医師に確認してからにしてください。詳しくは免責事項 をご覧いただければと思います。
おすすめ製品
僕の実購入(ラベル推奨量、研究用量の約1割)
- グリシンはSwanson Glycine Powder(227g) です。安い価格帯の単成分パウダーで、顆粒なので量りやすいです
- NACはCalifornia Gold Nutrition NAC with Molybdenum and Selenium(120ベジカプセル) にしました。NACにモリブデンとセレン(硫黄の代謝を助ける補因子)を足した複合タイプですが、値段はNAC単成分とほぼ変わりません
研究用量まで増やしたいならパウダー
研究の用量(グリシン約7g + NAC約9g/日)に近づけるなら、パウダーを別々に買って自分で量るのが現実的です。NACのパウダーはNOW Foods NAC Pure Powderなどが手に入ります。ただ硫黄のにおいが強いので、味の面で長く続けるのは大変になります。
手軽さ重視なら、カプセルの配合品
市販の「GlyNAC」配合サプリは、研究用量よりかなり少なめです。手軽に始めたい場合は、こんな選択肢があります。
- Life Extension GLYAC
- Renue By Science GlyNAC(公式直販)
※どちらの製品も、研究で使われた用量とは違います。その差を分かったうえで選んでいただければと思います。
価格や紹介コードを含む実購入リストは、iHerb厳選サプリリスト にまとめました。
僕の飲み方と、続けるかどうか
僕が飲んでいるのは、ラベル推奨量のNAC 600mgとグリシン1gで、合わせて1日1.6gです。研究用量(合計約16g/日)の約1割なので、研究と同じ量ではありません。
主観ですが、前より寝つきがよくなった気がしていて、入眠は7分程度です。ただ、毎週のようにほかの条件も動かしています。別の何かが影響している可能性も普通にあって、ここは本当にわかりません。
月額コストは約1,080円です(NACカプセル月約680円 + グリシンパウダー月約400円、iHerbで購入)。スタック全体の構成と月額は、僕のサプリスタック全公開 で開示しています。
今のところは続けるつもりです。安全性のデータは比較的そろっていますし、ロンジェビティ系サプリの中では安いほうなので、払うお金に対してリスクは小さいと思っています。量は今のままにして、増やすのは独立した再現が出てきてからの予定です。
やめる条件も決めてあります。別のグループの大規模RCTで再現に失敗したときと、NACを長く飲むことのリスクを示す情報が出てきたときです。
GlyNACに限った話ではありません。リスクが低く、自分の財布で許せて、健康長寿に役立ちそうなサプリは、研究の続きを待ちながら飲んでいくつもりです。
よくある質問
GlyNACとグルタチオンサプリ、どちらがいい?
人間の臨床データがそろっているのはGlyNACのほうです。 グルタチオンは口から飲むと、消化管で大部分が分解されてしまいます。リポソーマルグルタチオンは吸収(バイオアベイラビリティ)を高めた製品ですが、GlyNACのようなRCTのデータはまだ乏しいです。僕が材料から補うGlyNACを選んでいるのも、そのためです。
NACだけでも十分では?
グリシンと組み合わせるほうがいいと思っています。 GSHはグルタミン酸・システイン・グリシンの3つから作られます。加齢で足りなくなるのはシステインだけでなく、グリシンもです。Sekharらの研究も、グリシンとの併用で結果を報告しています。
市販のGlyNACサプリで研究と同じ効果は得られる?
わかりません。 研究用量はグリシン約7g+NAC約9g/日で、合計約16gです。市販サプリは1日あたり合計2-3g程度のものが多く、研究用量の1/5〜1/10にすぎません。量に比例して変化が出るタイプなら、市販サプリでは足りない可能性があります。
NACは日本で買える?
個人輸入なら買えます。 NACは日本では医薬品成分(アセチルシステイン)の扱いです。ただ、個人で使う目的でiHerbなどから買うことは、現時点では問題ありません。量は2ヶ月分以内が個人輸入の目安です。
グリシンとNACは別々に買って自分で混ぜてもいい?
僕は別々に買うほうを選んでいます。 理由はコストと、量を調整しやすいことです。今はグリシンパウダー(Swanson 227g)とNACカプセル(California Gold Nutrition)を、どちらもラベルの推奨量(合計1.6g/日)で飲んでいます。配合サプリより多い量ではありません。研究用量の近くまで増やしたい場合も、単成分を別々に買っておくほうが量を合わせやすいです。銘柄と価格はiHerb厳選サプリリスト にまとめています。
グリシンだけでも寿命は延びる?
マウスでは延びています。 ITP(米国NIA主導のマウス寿命試験)では、グリシン単独で寿命中央値が約4-6%延びました。人間ではまだ確かめられていません。Sekharらの臨床試験はすべてNACとの併用で、グリシン単独の長期試験はまだありません。ITPの全結果はITPまとめ記事 で整理しています。
参考文献
- Sekhar RV, et al. (2011). Deficient synthesis of glutathione underlies oxidative stress in aging and can be corrected by dietary cysteine and glycine supplementation. Am J Clin Nutr. 94(3):847-853.
- Kumar P, et al. (2021). Glycine and N-acetylcysteine (GlyNAC) supplementation in older adults improves glutathione deficiency, oxidative stress, mitochondrial dysfunction, inflammation, insulin resistance, endothelial dysfunction, genotoxicity, muscle strength, and cognition: Results of a pilot clinical trial. Clin Transl Med. 11(3):e372.
- Kumar P, et al. (2023). Supplementing Glycine and N-Acetylcysteine (GlyNAC) in Older Adults Improves Glutathione Deficiency, Oxidative Stress, Mitochondrial Dysfunction, Inflammation, Physical Function, and Aging Hallmarks: A Randomized Clinical Trial. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 78(1):75-89.
- Miller RA, et al. (2019). Glycine supplementation extends lifespan of male and female mice. Aging Cell. 18(3):e12953.
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